アルカリ加熱処理を施したチタン製デンタルインプラントの臨床応用

丸川浩平 講師 チタンが線維性結合組織を介在することなく直接骨と接着(osseointegration)することがBrånemarkらによって報告されて以来、チタン製のデンタルインプラントが臨床応用されるようになり、歯の欠損補綴法として今日広く普及している。一方、骨量不足、骨質の不良等によりインプラントの適用が困難または不可能な症例も厳然として多く存在する。そのアプローチ法としては①骨移植等の増骨処置②インプラント形状および表面の加工処理の2つに大別される。  このうちインプラント表面の加工処理は、表面形状(surface topography)もしくは表面性状(surface chemistry)を改変させることでosseointegrationの促進、確実性の向上をはかるものであり、これらは具体的には細胞の増殖や分化、配列等に影響することで骨形成に大きく関与することが知られている。  一方、整形外科領域において表面加工の有力な方法としてチタンのアルカリ加熱処理(alkaline-heat treatment)が実用化され、臨床応用されて良好な成績を収めている。この処理層は高い生体活性を示し、骨伝導能のみならず骨誘導能をも有することが見出されている。すなわち生体内や疑似体液に浸漬すると、表面に骨類似のアパタイトが析出し全体を被覆、周囲骨とすみやかに結合する。 基礎研究にてデンタルインプラントとしての有用性を検討したデータがないこともあり、将来的には臨床応用の上で既存品との比較検討を行いその優位性を確認することが必要である。得られた研究結果は、デンタルインプラントの未来を切り開くきわめて重要なデータとなりうると考えられる。